記憶の底に 第16話


「・・・黙秘する」

C.C.はしばらく考えた後、そう口にした。

「まあ、そんな事が出来るのはあの変な空間だけだよね。開けてくれる?」

コード、あるいはギアスがなければ黄昏の間に入ることは叶わない。

「そう何度も人間を送るはず無いだろう。馬鹿かお前」
「いいじゃないか」
「よくない。どのみちあの門は当分開けるつもりはない」
「え?なんで?」
「アーカーシャの剣・・・神殺しの剣がまだ残っているんだ。今時間をかけてその剣を消滅させている段階だから、私でさえ今は立ち入らないようにしている。だからこうして通常の交通手段で移動をしているんだ」

あの遺跡を使えば飛行機など必要無いが、C.C.は飛行機に乗ってこの国まで来た。スザクはその記録からC.C.がこの国に居る事を調べてやってきたのだ。だからC.C.のその言葉に嘘は無いのだろうと理解した。

「・・・どのぐらい時間がかかるものなの?」
「さあな。前例がないから何とも言えないが、あそこまで育てるのに20年近くかかっている。だから同じぐらいの時間はかかるだろう」

C.C.は暫く考えた後そう口にした。

「じゃあ今君に開けるよう言っても無駄って事?」
「そう言うことだ。コードを持つ者行く分には問題は無いが、お前のようなただの人間には、アーカーシャの剣の残骸は猛毒だ。その残骸が充満するあの場所に連れていく事は出来ない」

猛毒だから不死者のC.C.が入っても身動きが取れなくなってしまう。だから入らない。
”C.C.は隠し事が多いが嘘はつかない。”
それは人を疑ってかかるルルーシュでさえ認めていたことだから、スザクはC.C.がそこまで言うなら無理なんだと、深くため息をついた。

「20年か・・・」

長いな。長すぎる。

「あくまでも予想だ。破壊に20年かかったとしても、残骸が消え去るのに20年かはわからない。まあ、100年ほど放置すれば問題無いだろう」
「それまでルルーシュは一人なのか」

可哀そうじゃないかと言いたげに、スザクはC.C.を睨みつけた。

「私がいる」
「君はここに居るじゃないか」
「お前には言っていなかったが、コードを持つ者は死者と会話が可能だ。特にルルーシュは私と契約で繋がっているから、探さなくてもすぐに見つけられる」

死者といつでも会話が出来るのは本当。
今もちゃんと繋がっているから、ルルーシュが迷子になっても居所はすぐに解る。

「え?それって、今も会話できるって事!?」

スザクは驚き、身を乗り出す様に尋ねた。

「そうだな。死者との会話はいつでもできる。ルルーシュに関して言えば、さっきまで話しをしていた。ナナリーの事は兄と姉がよくしてくれていると言っていたな」

さっきの会話を思い出しながらC.C.はそう口にした。
そのとたん、スザクはすっと目を細めた。

「つまり僕がコードを持てばルルーシュの所に行けるし、会話もできるんだね」
「まあ、可能ではあるが、私のコードは渡すつもりはない。もう、誰にもギアスを授ける気もない。他を当たってくれ」
「わかった」

スザクはあっさりと返事をすると、荷台を飛びをり、ランスロットへと駆けだした。

「解ったって、枢木スザク!どうするつもりだ!?」
「コードって君以外にも存在するんだろ?あのV.V.もそうだったって聞いてるし。なら他にもいるかもしれないじゃないか。20年もただ待つつもりは無いよ」

そう言うが早いか、ランスロットは土煙を上げ上昇し、あっという間に姿を消した。
嵐のようにやってきて嵐のように去るとはこういうことかと、思わずランスロットが消えた空を見つめてしまう。驚き暴れる馬を制しながら、ルルーシュは疲れた顔でポツリとつぶやいた。

「・・・いるのか?他にもコードユーザーが」

V.V.の不老不死のコードはどこに行った、と突っ込まれなかったからよかったが、今の会話結構ぎりぎりだったよな。

「・・・まあ、いるだろうな。シスターのイメージを引き継いだ時、沢山の子供の額にコードが浮かんでいるというものがあった」

V.V.のコードの行方など、脳筋馬鹿だから気づいてないだろう。

「あのナリタでのイメージか。つまり、あの子供の人数分存在しているはずという事か」

結構多いな。

「・・・」
「・・・」
「・・・怖かったな、枢木スザク」
「・・・そうだな」
「変態だなあいつ」
「そうだな」
「死体に誓いか。流石に引いたぞ」
「俺もだ」
「・・・」
「・・・」

暫く二人は黙り込んだ後、馬を歩かせた。
落ち着きを取り戻した馬は、軽快な足取りで先に進む。
今のは見なかったことにしよう。
忘れてしまおう。
大体、この広い世界を旅して回るのだから、もう会うことはないだろう。
移動も記録が残らないよう、細心の注意を払えばいい。
そう思っていたのだが、その後もなぜかスザクはC.C.の居所を目ざとく発見し、月に1度は尋ねてきた。不老不死者がいそうな場所、どういう行動をとるのか知りたいというのが理由だったが、何度もやって来るうちに、とうとうばれた。
むしろ2年の間バレ無かっただけでも奇跡だろう。

「ちょっと待ってよルルーシュ!!」

ちゃんと話をしようよ!
勝手に結婚の誓いした事は謝るから!!逃げないでよ!!

「うるさい!黙れ!着いてくるな!」

うっとおしいぞ!この変質者!
ルルーシュお前は全力で走れ!はあ?それが全力だと!?

「あのタクシーに乗るぞC.C.!」

死体相手に愛をささやく男と話す事など無い!
って、俺は同性だ!女じゃない!!

「何でその話し知ってるのさ!?まさかあの時手綱持ってたの君なの!?」

って待ってってば!
タクシーに駆け乗り、悪い男に追われているから出してくれと、札を数枚出しながら言うと運転手は大喜びで車を走らせたのだが。

「おい!あの男タクシーと並走してるぞ!」

C.C.に言葉に、運転手はサイドミラーを確認し、その顔を青ざめた。

「うわああああ!ば、化物だ!!」

スザクの異常さを見慣れていないタクシーの運転手は、平然と車と並走し、何やら叫んでいるスザクに怯え、反射的にアクセルを踏み込んだ。
急にスピードが上がったことで、ルルーシュは慌てて運転手をなだめにかかる。

「落ち着いてください、怖くても相手は人間ですから、事故にだけ注意してください。それにあいつが狙っているのは俺達ですから、貴方に危害はありません」
「とりあえず飛行場まで行ってくれ。そこでどうにか撒くしかない」

そんな追いかけっこが繰り返され、ルルーシュとC.C.はこれ以上は無理だと、不老不死がバレてももう構わないと、ブリタニア宮殿に逃げ込み、ナナリーを筆頭にオデュッセウス、シュナイゼルとギネヴィアの守護の元、アリエスの離宮にひきこもった。
ちなみにロロは無事皇籍を戻し、ナナリーの双子の弟として認知されたが、ナナリーの影のように付き従い、大人く気の弱いふりをしながらナナリーを守っている。

アリエスの離宮の光あふれるテラスで、C.C.はうんざりという表情でカップを傾けた。

「どうするんだあの男」

いい加減もう疲れたぞ。
C.C.の呟きに、ふわふわとした笑顔をむけてくるナナリーとロロを思う存分デレデレとした顔で愛でていたルルーシュは、とたんに表情を暗くした。
ナナリーとロロも同じく表情を暗くし眉を寄せる。

「まともな奴だと思っていたのに・・・っ!」

母さん、俺のたった一人の親友は変態でした。
恋愛感情はともかく、死体相手には無いだろう・・・。

「お前の周りにまともな人間などいるか」
「ひどいなC.C.もルルーシュも。僕は普通だよ」

聞こえてはいけない声が聞こえ、慌てて声の聞こえた場所へ視線を向けた。

「でた!枢木、どうしてここに!」
「スザク!?」
「スザクさん!?」
「枢木卿!?」

ここに入るには警護のいる場所を通らなきゃならないのに!?
ジェレミアはどこに行った!!

「え?ルルーシュの事情を知る数少ない人間だから、君の騎士になったんだよ?ねえ、聞いてルルーシュ!殿下たちが君の騎士である僕のためにコードを探してくれるって約束してくれたんだよ!」

そしたら永遠に一緒だよ!

「なんだと!?ルルーシュ!すぐに取り消させろ!」

って、専任騎士の誓いも互いの了承が必要なはずだろ!
なんで一方的に誓いをしてるんだこいつは!

「行くぞC.C.!・・・ナナリー、ロロ、また後でお茶を飲もう」

ナナリーとロロから離れるのは辛い・・・!だが、これ以上スザクのイメージが崩れる前にこいつから離れなくては!俺のスザクは10歳の頃と、ブラックリベリオンまでのスザクだ!それ以外はそっくりさんだ!本人だなんて認めない!

「ちょっと待ってよルルーシュ!!」

イメージって何?
僕はいつもと同じだし、そっくりさんじゃないよ!
慌ただしく部屋を飛び出した三人を眺めながら、ナナリーはふう、とため息を吐いた。

「本当に困った人ですね。でもスザクさん、オデュッセウス兄様、シュナイゼル兄様、ギネヴィア姉様が見つけたコードは私達がもらう約束なので、スザクさんには渡しませんよ?お亡くなりになっていたお兄様の唇を穢すなんて許されませんし、スザクさんがここまで変態だとは私も考えていませんでした」

そしてお兄様は私達の嫁です。渡しません。

「ほんとだよね。今はC.C.が付いてるし、兄さんにもショックイメージが使えるから、枢木に何かされる心配は低いけど、ホントどうにかしないと」

兄さんは僕たちの嫁なんだから。
ロロは思わず果物ナイフを握りしめながらそう口にした。
本当ならルルーシュを追いかけたかったが、愛する双子の姉、ナナリーの護衛もしなければならない。だから今はC.C.に任せるしかないのだ。

「でも、C.C.さんも邪魔ですよね。お兄様はああいう性格ですし、同衾されていてもお二人に何も無い事は監視カメラで毎日確認はしていますが、お兄様にくっつき過ぎです」

一人寝がさびしいのであれば、私達と一緒にお休みになればいいのです。

「だね。兄さんには僕たちだけがいればいい。でもナナリー。不老不死になる前に足を治さなきゃ」
「そうですね。目はお兄様がCの世界に干渉してお父様のギアスを解除してくれましたが、足は自力で治さなければいけませんから」
「頑張ろう。そしてナナリーも一緒に枢木を・・・」
「ええ、頑張りましょうロロ」

ルルーシュの前では常に理想の妹と弟を演じている腹黒姉弟は、そう言いながらにこやかに笑った。



最初、御者がルルーシュだと気付いて平穏無事に?終わる方向で書いてたけど、それじゃいつもと変わらないと全て削除して流れを変えたら、スザクが完全に変質者になってしまいました。スザクのその様子は百年の恋も冷める効果があったらしく、スザクが大好きだったルルーシュとナナリーは完全に引いてます。
それを好都合とC.C.とロロはスザクを消しにかかりますが、スザクは止まりません。
5人仲良く永遠に追いかけっこしてればいい。

15話